ゾンビが共食いを始めたら人類は救われるのか

ゾンビ黙示録といえば、一度感染が広がると際限なく増えるゾンビの大群に人類が脅かされるイメージが定番です。しかし、ゾンビ同士の共食い によって最終的には数が減っていく「自己制限モデル」を導入すると、全く異なる展開が見えてきます。
本記事では、この「ゾンビ共食いモデル」をさらに深掘りし、数理科学・社会心理・歴史文化・技術インフラなど多方面から検討いたします。また、日本国内の拠点候補 に加え、武器や戦闘戦略 に関する観点も新たに盛り込みました。


1. ゾンビ共食いモデルの概要

1-1. ゾンビの自己制限メカニズム

通常のゾンビ作品では、「ゾンビが増え続ける終わりなき恐怖」が重視されます。しかし、人間が激減すると、ゾンビ同士が共食いして自滅に向かう という前提を加えると、ゾンビは無限に増え続けるわけではなく、最終的には大きく数を減らす可能性が出てきます。

1-2. 人類にとっての「時間」と「隔離」

ゾンビがいずれ衰退するならば、無理に戦わずとも、安全な場所に籠り、長期的に待つほうがリスクを抑えられる という結論に至ります。
つまり従来の「ゾンビをいかに倒すか」ではなく、「ゾンビが勝手に減っていくのを待つ」ための環境づくり(シェルター、防御策、自給自足)が生存戦略の要となるわけです。

1-3. 基本の数式

最もシンプルなモデルでは、健康な人間 HHH とゾンビ ZZZ の変化を次の連立方程式で表します。 {dZdt=βZH  −  γZ2  −  δZ,dHdt=− βZH.\begin{cases} \dfrac{dZ}{dt} = \beta ZH \;-\; \gamma Z^{2} \;-\; \delta Z, \\[6pt] \dfrac{dH}{dt} = -\,\beta ZH. \end{cases}⎩⎨⎧​dtdZ​=βZH−γZ2−δZ,dtdH​=−βZH.​

  • β\betaβ: ゾンビが人間を捕食・感染させる率
  • γ\gammaγ: ゾンビ同士の共食い係数
  • δ\deltaδ: ゾンビの自然劣化(腐敗・崩壊)の速度
  • Z(t)Z(t)Z(t): 時刻 ttt におけるゾンビ数
  • H(t)H(t)H(t): 時刻 ttt における健康な人間の数

人間数 HHH が減少していくと、やがてゾンビは餌を失い、共食い (γZ2\gamma Z^2γZ2) と自然劣化 (δZ\delta ZδZ) によって急速に数が減りはじめる構造が見えてきます。


2. 数理・科学的アプローチの拡張

2-1. 確率論的モデルとシミュレーション

  • モンテカルロ法エージェントベースモデル の導入により、運が悪いシナリオではゾンビ数がしぶとく残る、あるいは予想外に早期に壊滅するなど、多岐にわたる可能性を可視化できます。
  • 大規模なランダムシミュレーションを行い、「ゾンビが自滅するまでに要する期間の分布」や「人間がどの程度生き残れるかの確率」を定量的に示すことが可能です。

2-2. 空間モデルの高度化

  • 偏微分方程式(PDE)モデル: 都市部から離島や山間地帯に向かうゾンビ流入を数式で扱い、ゾンビ同士の共食い・衰退の地域差を解析する。
  • エージェントベースモデル: 地図データや地形を細かく設定し、ゾンビ個体と人間個体が各マスで遭遇→感染・捕食、あるいは移動・離脱といった挙動をシミュレートできる。
ゾンビ共食いモデル

2-3. 複数種類のゾンビの導入

ゾンビを一種類と定義せず、活動寿命が長い個体腐敗が早い個体 を並存させれば、さらに複雑なダイナミクスが描かれます。ゾンビ同士の競合・共食いでどのタイプが優勢になるのか、興味深い研究テーマにもなるでしょう。

時間経過による個体数変化

3. 社会学的・心理学的要素の深掘り

3-1. コミュニティマネジメントと社会秩序

長期避難では、物資管理や住民同士の信頼関係が致命的に重要になります。

  • 強権的なリーダーシップが一時的に有効か? それとも民主的合議制が生存に寄与するか?
  • 外部からの難民を受け入れるか拒むか?
    こうしたテーマを探究するだけでも、人間ドラマが一気に深まります。
コミュニティマネジメント

3-2. 心理ストレスと精神的ケア

閉鎖空間での長期生活は、大きな心理的負担を生みます。

  • 長く続く孤立や物資不足への不安
  • 知人や家族がゾンビ化したショック
  • 逃れられない緊張状態
    ここを安定的にコントロールする仕組みを持たないと、たとえ物理的に安全な拠点でも内部崩壊を引き起こす可能性があります。

3-3. 倫理と価値観の変容

文明社会が崩壊しかけるほどの危機下では、倫理観や宗教観が激変することもあります。

  • 「共食いをするゾンビは人間なのか、駆除して構わないのか」
  • 「限られた資源をどう配分するか」
  • 「外部支援を待つ or 自分たちで秩序を築く」
    このような問題が、コミュニティを揺さぶる重要なファクターとなるでしょう。

4. 歴史的・文化的視点の導入

4-1. 歴史的パンデミックとの比較

ペストやスペイン風邪など歴史上の疫病でも、都市部の高密度地域から逃れ、山間部や離島に身を寄せる事例が繰り返し見られました。感染症と異なり、ゾンビは互いを捕食し合う要素が加わるものの、「密集すると自滅を早める」点は構造的に似ていると考えられます。

4-2. 伝統的生存技術の再評価

大規模インフラが機能しなくなれば、狩猟採集や伝統農法、保存食技術 が改めて重要度を増します。日本各地の山菜採取や漁業、塩の製法といった古来からの知恵が、「文明崩壊後」を生き延びるカギとなるかもしれません。

4-3. 地域文化・祭事とのリンク

日本には多種多様な祭りや信仰形態があり、非常時にもこれらを続けようとする人々が存在し得ます。それが精神的支柱となるか、逆にコミュニティ内で「緊急時にそんなことを」と分断が生まれるか――そこに地域文化固有のドラマを描くこともできるでしょう。


5. 技術やインフラの活用をさらに深める

5-1. 防災施設・地下空間・旧防衛拠点

日本では地震や台風対策として堅牢なインフラが整備されています。

  • 東京外郭放水路 のような大規模地下施設は、壁が厚くゾンビの侵入を制限しやすい。
  • 軍事要塞跡 は本来の防衛目的を活かしてシェルター化しやすい。

5-2. インフラ崩壊後の技術“再興”シナリオ

ゾンビ危機が長期化すれば、電力や通信網が大部分停止する恐れが高いです。しかし、

  • ソーラー発電・風力発電など小規模分散型のインフラ
  • 地域コミュニティ内でのバッテリーや水耕設備
    といった形で、局所的に近代技術を維持・復旧 していく可能性も十分考えられます。文明が崩壊と再興を同時に体験するドラマが生まれるでしょう。

5-3. バイオテクノロジーや医療の重要性

ゾンビ化の原因を病原体と捉えるなら、ワクチンや治療薬を開発できるかどうかが大きな分岐点となります。

  • ただし大規模研究施設が壊滅している場合、極めて限られた機材・物資での苦闘が必至。
  • もし研究を断念して安全地帯でただ待つほうが全体の生存率が高ければ、コミュニティ内で「研究継続の是非」が激論となるかもしれません。

6. 武器・戦闘戦略の考察

6-1. 戦うより“待つ”モデルではあるが

「ゾンビはやがて自滅する」という本モデルの核心から言えば、大規模な武力行使は必須ではない とされています。しかし、それはあくまで“最終的にゾンビ総数が減る”という長期的視点の話。実際には、以下のような場面で武器の存在が大きな意味をもちます。

  1. 拠点への局所的侵入に対する防衛
    • シェルター周辺を少数のゾンビが徘徊したり、侵入を試みたりするケースは避けられません。
    • この段階で確実に排除できるかどうかが、感染拡大の重大リスクを回避するうえで極めて重要です。
  2. 物資調達や移動の際の護衛
    • 時には資源を探すために外に出なければならず、遭遇戦が避けられない状況も。
    • 十分な武装をしていれば、少数のゾンビとの交戦を短時間で切り抜けることが可能です。
  3. コミュニティ内での抑止力・秩序維持
    • 武器がなければ平和、とも言い切れません。極度の恐慌状態や内部対立を制止できる手段として、武装が“政治的抑止力”として作用する場合もあります。

6-2. 武器の種類と有用性

  1. 近接武器(刃物・鈍器など)
    • 弾薬の消耗がなく、静音性が高い。
    • ただしゾンビに近づくリスクは高く、訓練が必要。
  2. 銃器(ライフル・ショットガン・ハンドガンなど)
    • 距離を置いて対処可能で、特に単発の威力が高い武器が有効。
    • 弾薬の確保・整備が長期戦では課題。銃所持規制の厳しい日本では、入手性自体が低い。
  3. 弓やクロスボウ
    • ある程度の距離から攻撃可能で、矢を回収し再利用できる利点。
    • 弾速が銃に比べて遅いので、大群が押し寄せる状況だとやや心許ない。
  4. 即席武器(火炎瓶、トラップなど)
    • 日用品や工業製品を応用し、手製爆弾や罠を作る。
    • 素材調達と製造リスクが伴うが、うまく設置すれば継続的に拠点周囲を守る障壁ともなり得る。
ゾンビ世界での武器

6-3. 武器使用によるモデルへの影響

ゾンビを物理的に減らしてしまうと「ゾンビ同士が共食いする機会」がやや減り、共食いのペースが下がる可能性もあります。しかし、そもそも長期的にはγZ2\gamma Z^2γZ2やδZ\delta ZδZが強く働き、ゾンビ数はいずれ減少に向かいます。

  • 拠点防衛を優先する段階的利用: 大群との戦闘は避け、少数のゾンビを排除するために最適化した武器構成を整えておき、長期的には“待つ”戦略を貫く。このバランスが理想的と言えます。

7. 日本国内での拠点候補

前述した「待ち続ける」戦略を支えるには、地形やインフラを活かした拠点選びが不可欠です。

  1. 離島
    • 自然の海洋バリアによりゾンビの侵入が制限される。
    • 漁業をベースにした自給自足が比較的容易。
  2. 山間部・豪雪地帯
    • 豪雪期には道路が閉ざされ、ゾンビも移動困難。
    • 豊富な水源・野生動物・農地があれば長期生存向き。
  3. 防災施設や地下構造物
    • 東京外郭放水路など堅牢な構造物は大群から身を守りやすい。
    • 軍事要塞跡を改修し、多層防御や監視体制を構築する手段も。

武器や防衛策を準備しつつ、長期シェルターとして活用できる場所を早期に確保することが、最大のカギとなるでしょう。

離島の拠点

8. おわりに

「ゾンビが共食いを始めたら人類は救われるのか?」――この問いへの回答として、理論的にも物語的にも「イエス」と言えるシナリオ が充分に考えられます。ゾンビは高密度になるほど自身の資源を食い尽くし、最終的に自滅へ向かう可能性が高いのです。
もっとも、その間に人類が安全を維持できるかどうかは、拠点防衛力や武器の活用、コミュニティ運営の巧拙 にかかっています。歴史的パンデミックの教訓から学び、技術や農耕技術を再興し、精神的な安定を保ち続ければ、文明再建の希望は十分に残されているでしょう。

「待つだけで勝てる黙示録」に感じられるかもしれませんが、実際には短期的な局所戦闘や長期封鎖のストレス、資源管理などの難題をクリアしなければなりません。多角的にモデルを拡張していくことで、ゾンビものが単なるホラーやアクションを超え、学術的・社会的・人間ドラマ的にも多彩なテーマを内包し得ることを、ぜひ感じていただければ幸いです。

最後までお読みいただき、誠にありがとうございました。皆様のサバイバル戦略が万全であることを心より願っております。

文明の再建
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